歩行練習



空一面に青空が広がって、太陽の光が眩しい。
そんな日に、サスケと小太郎は小助に頼まれてお使いに街に出て来ていた。
「あと一カ所だから早く行こうぜ!」
二人の両の手には既に沢山の荷物が握られている。
凄く気になる。サスケが持っている重そうな荷物。
「あぁ。最後は…団子屋だったよな?」凄く、重そうだ。でも、俺が持つって言っても、サスケは絶対嫌がるよな。
その言葉に、数歩分だけ先を歩いていたサスケは振り返る。
「そう!幸村の好物だからな。ったく小助は幸村を甘やかしすぎだっての!」俺、過保護すぎるか・・・?
とは言っても結局は自分も幸村には甘いんだよな、と思い、思わず苦笑する。
「あ。あそこじゃないか?」
不意に小太郎が前方を指さした。
指差された方向を見れば、確かにそれらしき店がある。
「だな!じゃ、あそこまで競争!負けた方が荷物持ちだかんな!」
・・・これで負ければさりげなくサスケの荷物を持てる!
「あ!ちょっ、待てってサスケ!!」よし。これでわざと負ければ・・・って・・・
後ろ背に、小太郎が焦っている気配が伝わってくる。
そんな気配にサスケは一人、気取られないように笑みを零した。
こんな風にまた二人で一緒にいられるなんて、本当に夢みたいだ。
ちょっと前までは、もう二度と、一緒に笑い合えることなんてできないと思っていた。
夢の中で会えても、目を覚ませば彼の姿はすぐに消えてしまった。
小太郎の姿が自分の前から消えてしまうのが怖くて。
記憶の中にある小太郎の姿を必死にたぐりよせた。
気が付けば、何度もそんな夜を繰り返していた。
大切な存在だから。
もう二度と、離れたくない。
「っし!オレの勝ち!」
手加減なしで負けてしまった・・・。スピードではサスケにかなわない・・・
サスケは息を切らしながら店の中に入る。
一瞬遅れて小太郎も中に入る。
「ま、待てって…サスケ…」
「いらっしゃいませ」
品の良い声が店内に響く。
淡い桜色の着物を着た綺麗な女性の声だ。
「みたらし12本ください!」
「はい。少々お待ちください。」
女性はそう言ってやんわりと微笑み、店の奥へと消えていった。
「サスケ」
呼ばれて見上げると、小太郎と目が合った。
少しだけ、ドキリとした。
「どうした?」よし、言うぞ。
「荷物、貸せよ。」
「へ?」
「さっき俺が負けただろ?」
「あぁ。やっぱりいいや。お前もいっぱい持ってるし。それ以上増えると辛いだろ?」そ、そう言ってさりげなく心配してくれるのは嬉しい。否、かなり嬉しい・・・。でも、それは困る;
「平気だって!約束は約束だからな!」
そう言って微笑む小太郎の目が優しすぎて、少し戸惑う。
嫌なんじゃなくて。
嬉しいから。
だから、戸惑う。
「じゃあコレ、頼む!」
右腕に抱えていた包みを小太郎に渡す。
「よし。まかせろ。」
小太郎は荷物を一度持ち直し、サスケの荷物を受け取った。
「お待たせしました。」
奥から再び先程の女性が出て来る。
「偉いわね。お使い?」
女性は笑いながら聞く。
「…はい。」
「…ん〜。兄弟かしら?」
「ぶっ!!」
兄弟という言葉に、小太郎が吹き出す。
兄弟に見えるのか。俺たち。こんなにサスケを見る目は弟を見る目とはかけ離れているのに。そう思うとおかしくてたまらない。

…──兄弟?

「はははっ!こんな弟いたら大変だよな!」本当に絶対大変だ。
小太郎は余程面白かったのか、肩を震わせて笑っている。
「あら、違った?」
「…違う。」
どうしてかわからないけど胸が痛くなって、そう言うのが精一杯だった。
「…サスケ?」
「はい。じゃあコレ、みたらし12本になりますね。」
「あ、ありがとうございます。」
小太郎が包みを受け取る。
「じゃあ気をつけて帰ってね!」
笑顔で見送られ、二人は店を出た。


「サスケ…?どうかしたのか?」
どうしたんだろう・・・?こころなしか顔色が悪いような気もする。大丈夫なのか?
小太郎の十歩先。
サスケはひたすら無言で歩いていた。
先程言われた言葉が頭の中から消えてくれない。
兄弟。
そう‥見えるのだろうか。
「サスケ?」
小太郎は弟のような存在として自分を見ているのだろうか。
たまに自分をすごく優しい目で見てくれるのも、弟のように思われているからなのだろうか。
チクリ。
また胸が痛くなった。
「おい‥サスケ?」
一歩。
踏み出して、立ち止まる。
「‥サスケ?」
「…レは…小太郎の弟じゃない…」
は?
「は?」
「オレは小太郎の弟なんかじゃないからなッッ!!」
「サス――…」
一歩。
振り返って、近付く。
ただ呆然と小太郎はサスケを見つめる。
二歩、三歩。
あと五歩分の距離で止まって、小太郎の顔を見上げる。
金色の髪が太陽の光を反射していて綺麗だ。
「サスケ?」
その表情は、ぽかんとしていた。
「小太郎は…オレのこと…」
言えたのはそこまでで、後の言葉が出てこない。
「サスケ…?」
「お前は…っ」
「どうしたんだ?…サスケ?」
「お前はオレのこと…弟…だと思って…るの…か?」
・・・え?
最後の方はほとんど声にならなかった。
「サスケ…」
自分には五歩分だった距離が、小太郎の三歩で無くなる。
すぐ目の前に小太郎がいて、思わず俯いた。
「何でサスケが俺の弟なんだよ?」
そんな風に思えるわけが、ないのに・・・。
「だっ…て…」
「俺はお前を弟だと思ったことなんてない。」
はっきりと言い切る声に顔をあげる。
「何でそうなるんだ?」サスケは俺を兄だとでも思っているのか・・・?
むっとした表情で言う小太郎に、思わず吹き出す。
良かった。
何故かそう思う自分に少し戸惑う。
でも、それ以上に、嬉しかったから。
「な、何だよ…?」
「な。小太郎。ちょっと屈めよ。」
「え?」
「いいから早く。」
少し笑って、屈んだ小太郎との間にまだわずかに残っている距離を、自ら縮める。
すぐ近くにある小太郎の首に腕をまわして、抱き付いた。
うわぁ〜ッッ!!?ななな何だっ!?
小太郎の肩口に額をくっつけて、また笑う。
「サ、サスケっ!?」
荷物がおっこちるのも気にせずに、ずっとそのままでいた。
抱きしめても・・・いいかな・・・
戸惑いがちに背中に手がまわされる。
何故だか、すごく心地よかった。
心地いい・・な・・・
「弟なわけ…ないだろ…」弟に、こんな感情抱くはずがないから。
「うん…小太郎の弟になんかなってやんねーよっ。」
弟だったら、こんなにも心地よくは感じないから。
そして、二人して笑った。

ずっと一緒にいたくて。
大切な存在で。
たまに目があうとドキリとして。
・・・兄弟じゃ、嫌で。

どうしてそう思うのかはよくわからないけれど。
だから・・・。



ただ今は、もう少しだけ、このままでいたいと思った。







*****
色々あってアップしようかどうかさんざん迷ったあげくやっぱりアップしました;
うっわー恥ずかしいな。(汗)
サスケとマコちゃんは対等な存在なんです。








2004.09.25up

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