紙ヒコウキ。


サスケは日当たりの良い縁側に座りながら横に置かれた折り紙をボンヤリと見つめた。
小助が市でもらってきたらしい。
別に欲しかったワケでもないけれど・・・。

サスケはその中から白いものを一枚手に取った。
なんとなく紙ヒコウキを折る。
そして出来上がった不格好なそれを空に投げた。
けれどそれが空に届くことはなく、昨日できた水たまりの中へポチャリと落ちた。
水たまりの中に映った青空を飛んで満足している紙ヒコウキ。
なんだか悔しくなってもう一度折った。


投げる。


けれどまたしてもそれは水たまりの中へと落ちていった。


水たまりの中に紙ヒコウキが二個。


やっぱり悔しくなってもう一度折った。投げた。
何度も何度も繰り返し繰り返し。
けれどその紙ヒコウキがあの青空に届くことはなく。
ただ水面に映った偽の青空を飛ぶばかりだった。


「折り紙かい?サスケ。」
まだ必死に紙ヒコウキを折っていると突然頭上から声をかけられる。
──幸村だ。
その声に応えずにいると幸村はよいしょ、とサスケの隣に腰を下ろした。
「ね、ボクもやっていい?」
子供のような笑顔で幸村は赤い折り紙を一枚手に取った。
幸村は器用な手つきで折り紙を折る。
そしてサスケのものとは比べものにならないくらいに綺麗に折られたそれを、青空に飛ばした。
綺麗に、本当にそれは綺麗に青空を飛ぶ。
青い空に赤。
鮮やかな対比。
水たまりに落ちた紙ヒコウキを嘲笑うかのように悠々と空を飛ぶ。
「久しぶりだなぁ。紙ヒコウキなんて。」
どこか楽しそうな幸村の声色。
サスケは空を見上げ、そして地を見つめた。
地の水たまりの中にもその赤い姿は映っている。
映っているけれど、水たまりに浮かぶ紙ヒコウキとその赤い紙ヒコウキのいる場所は全然違う。
まるで、自分と幸村のようだ。
大きな空を自由に飛ぶ幸村と、偽の空を飛ぶ自分。
交わることは決してない。
なんだかやっぱり悔しくて。
サスケは幸村の着物の襟を強く引っ張った。
精一杯腕を伸ばして、精一杯背伸びをして。
そしてキスをした。
触れるだけの幼いキス。
・・・少しでも近付けた?


驚いたように目を見開く幸村から目を逸らし、サスケは地に降りた。
そしてサスケは水たまりに落ちて汚れた紙ヒコウキをひとつ手に取る。
投げた。
水に濡れたせいだろうか。
それは少しも飛ぶことはなく、汚れた紙ヒコウキはすぐにまた地に戻る。
「サスケは飛ばし方下手だねー。」
「あぁ?」
「ホラ、ちょっと貸してごらんよ。」
そう言って幸村は不格好で、そして泥にまみれたサスケの紙ヒコウキを手に取る。
そしてそれを空に飛ばした。
「あ・・・」
それは青空を飛んだ。
青空を飛ぶ赤と白。
「サスケは不器用だからなぁ。」
どこまでもその声は明るい。
「ボクが飛ばせてあげるよ。」
体を引き寄せられて口づけられる。
優しいキス。
「ん・・・っ」
そして目を開くと幸村のいつもの笑顔。
「たとえサスケがいくら泥にまみれても、ね。」
それがボクの役目でしょ、と笑う幸村に、コイツにはかなわないと思った。
「一人じゃ飛べないなら二人で飛べばいい。一緒に、ね?」
「・・・ありがと」
小さく呟いた声は彼に届いただろうか。
体に回された手がやけに温かい。
それに安心してサスケはゆっくりと目を瞑る。
そんなふたりの上を、紙ヒコウキがふたつ、寄り添うように飛んでいった。








*****

この時代に飛行機なんてないだろって突っ込みはご勘弁!(汗)
・・・ないよね?(聞くな)






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