「わー!サスケすごい人だよ!」
そう言って隣りを歩く幸村は楽しげに笑った。
その左手には、はぐれないようにとつながれた手。


明日の前の日


二人は初詣に来ていた。
初めて見る景色に、サスケは思わず目を見開く。
本当にすごい人だ。
神社の内にたてられた出店からは何やら良い匂いも漂って来る。
人ごみは苦手なはずなのに、何故かわくわくとする胸をサスケは軽くおさえた。
そしてきょろきょろと一通り見渡してから自分の右上を見上げた。
「・・・はぐれるんじゃねぇぞ。幸村。」
そんな憎まれ口もいつもよりトーンが高くなってしまった気がする。
そんなサスケに、幸村は小さく笑みを零した。
「うん。気をつけるよ。だから手、しっかり握っててねサスケv」
そう言って幸村はつながれた手を強く握りなおした。
手が、熱い。
「わ、わかったよ!仕方ねぇな。ほら、早く行くぞ!」
「あ、待って!」
手は放さないで足早に歩きだす。
人にぶつかりそうになる度、幸村にかばわれたのが少し悔しかった。

「うわぁ〜本当にすごいな。お参りするまで結構かかりそうだね。」
「・・・そうだな。」
目の前には長蛇の列。
皆新しい年が良い年になるようにと願いに来たのだろう。
その列の最後尾に、幸村とサスケも並ぶ。
「サスケはお願いすること決めた?」
「あぁ。お前は?」
「もちろん。」
願うことは、ひとつだから。

「サスケ、寒くない?」
「平気。お前こそ大丈夫か?」
こいつは寒いのが苦手なはずだ。
少し心配になってその顔を覗きこむと、何故か幸村は嬉しそうに笑った。
「な、なんだよ…?」
「ううん。サスケってやっぱり優しいなぁ〜と思ってv」
「は!?な、何言ってんだよ!」
「サスケってば可愛い〜v」
そう言うのが聞こえるより先に、ふわっと温かい体温に包まれていた。
幸村の、腕の中だ。
「うわ!や…めっ!幸村っ!」
「サスケあったかーいv」
「ふざけんな!」
ああ、もう。
嫌じゃ、無い。
幸村にこうされているのは、ひどく心地が好いから。
「あれ?サスケのフードに何か入ってるよ?」
「へ?」
ゆるめられた腕の中で小さく身じろぐ。
腕をつっぱって幸村との間にわずな距離をつくると、幸村の顔を見ることができた。
「ホラ。5円玉!」
「・・へ?」
幸村はサスケのフードの中から取り出したらしい5円玉をサスケに手渡す。
「本当だ・・何で?」
「ん〜きっとこの列を見て、並ぶのが面倒になった人がお賽銭箱に投げ入れようとしたんじゃないかな?」
「・・・どうすんだよ、これ?」
「そうだな〜。じゃあボク達が代わりにお賽銭箱に入れてあげようよ!」
「オレ達が?」
「うん。この5円玉を投げた人の願いが叶いますようにってさv」
さも名案だと言わんばかりに幸村は笑う。
そんな顔を見たら頷くしか無かった。

またしばらく並んで、やっと順番が回ってきた。
自分の分と、賽銭箱に入れられなかったマヌケな人の分の5円玉を賽銭箱に入れる。
それがガチャガチャと音をたてるのを聞きながら、静かに手を合わせた。


どうか───・・



「ねぇサスケ。ちゃんとさっきの5円玉の人の分も神様にお願いした?」
「ああ。ちゃんとしたよ。」
「そう・・・。じゃあ。」
ぽん、と肩に手を置かれる。
幸村の表情は、笑顔。
嫌な、予感。
「じゃあ、ボクのお願い、ちゃんと叶えてねv」
「・・・はぁ?」
「だってあの5円玉、ボクがサスケのフードに入れたんだもんv」
「はぁっ!?」
「大丈夫。サスケなら叶えられることだから。」
幸村の言ったことを理解して怒るより先に、そっと、口づけられる。
あったかい幸村の温度。
「・・んっ」
くしゃりと幸村の手が髪にふれるのを感じながら、ゆっくり目を開く。
「ボクは神様なんて信じて無いから。」
「え?」
頬にも口付けをひとつ。
それがくすぐったくてサスケは少し身をよじった。
けれど幸村から目を離すことはしない。
否、離せなかった。
綺麗な幸村の目が、いつになく真剣な色に染まっていたから。
「・・幸村?」
そう言って幸村の頬に手をのばす。
のばしたその手が幸村の頬に触れる。
「でもサスケの言うことなら信じられるから。」
「な、何だよ・・・お前の願いって」
「んーとね」
そっと、耳元に口を寄せる。




「       」





囁かれた言葉に空気だけで笑う。
「お前が望むんなら、叶えてやるよ。」
自ら幸村に口付けて、目を見据える。
「お前の願いが叶うようにって言っちまったしな。」
何より。
「だから。」
自分の願いも同じだから。
そんな願いを叶えろ、なんて。
望むところ。
「お前も、俺の願いをきけよな。」
ぽすっと肩口に顔を置いた。
冷たいはずなのに、じんわりとした熱が伝わる。
「いいよ。サスケのお願いも叶えてあげる。」
温かい。
ふれるだけの口付け。

はらり。


雪が落ちてくる。
地面にふれると、すぐに溶けてしまった。
きっと自分達も同じようなもので。
今に消えてなくなるだろう。
ならば。
消えるまでの一瞬を大切に歩みたい。

できるなら、この漢と共に。


『ずっと一緒にいられますように』


今日も眠りについて、次に目が覚めればまた新しい一日が始まる。
きっとその時にも、右手にははぐれないようにとつながれたこいつの手がある。














***
最初はラブコメっぽく(?)と思っていたのですが、何故かしんみり。(汗)
「ずっと一緒にいよう」って、いつか離れることを予感しているからこそ言う台詞のような気がします・・。(何)
とにもかくにもあけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします〜!
ちなみに書き忘れましたが、こっそり現代設定です;
フードとか5円玉とか・・・(汗)










2005.01.01


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