一緒に行こう。
どこか遠くに。
きっとそこには今まで感じたこともないくらい楽しいものがあるはずだから。
一緒に行こう。


幸せ。


「おい!サスケ!起きろって!!」
自分の隣ですやすやと寝息を立てる少年を揺する。
よほど熟睡しているようで、目を覚ましそうにない。
これでもか、というくらいに肩を揺する。
それでも規則正しい寝息が崩れることはなく、呆れたようにひとつ溜め息をついた。

──富士の樹海。

そこは生と死が常に隣り合わせの場所だ。
強い奴だけが生き、そうでないものは死ぬ。
そんな場所でこうも熟睡されると呆れを通りこしてコイツ実は大物なのかもしれないなどと思ってしまう。
けれどきっとそれは俺の前だけのことだから。
そう思うとなんだか胸があったかくなる。
この小さな存在がとてつもなく大切に思えて優しく銀の髪を梳いた。

「・・・ん・・・?こたろ・・・?」
サスケはむくりと起きあがって、まだ半開きの目をこちらに向けた。
髪に寝癖がついている。
「早く起きろよ。今日は遠くまで出かけるんだろ?もう夕刻だぜ?」
俺がそう言うとサスケはあっ、と慌てて立ち上がる。
「なんで起こしてくれなかったんだよ!バカ小太郎っ!」
「なっ!?」
「お前が起こしてやるって言ったから寝たのに!!バカ!!」
それはあんまりな言い草である。
散々起こしたのに起きなかったのはサスケの方だ。
「起こしても起きなかったんだよ!バカ!ったくこんな所で熟睡できるなんてな。」
「なっ、なんだよ!!お前が今日はオレが見張ってるから安心して寝ろって言うから・・・っ!!」
恥ずかしそうに頬を染めるサスケが面白くて思わず笑ってしまった。
「なっ!?何で笑うんだよ!?」
叫んだせいかよけいに赤くなったサスケのおでこを軽く小突く。
「って!」
「ばぁーか。ホラ、早く行くぞ!」
自分より少し小さな手をとって走った。
後ろでサスケがブツブツと文句を言いながらも小さく自分の手を握り返してくれるのがすごく嬉しかった。

走る。走る。走る。

それでもこの樹海の風景はほとんど変わらない。
息を弾ませながらそれでも走り続けた。

走る。
すると大きく視界が開けた。
そこに見えたのは大きな赤い風景。
赤、というより橙と言ったほうが正しいだろうか。
「スゲェ・・・。」
それしか言葉が出なかった。
空も。木も。
全てが橙に染まっていた。
こんなに眩しいものを見たのは初めてかもしれない。
「スゲェ・・・。」
隣でサスケも呟く。
きっとこれは二人が初めて見た光。
「空が・・・燃えてる。」
この感情は一体なんだろうか。
胸がかき乱されるような、ざわめくような。
夢か現か。
確かに繋がれたこの手だけがこれは現実なのだと教えてくれる。
「小太郎・・・」
「ん?」
「ここ、二人だけの秘密の場所な?」
悪戯っぽく笑うその顔に、自然と自分も笑顔になった。
「あぁ。」
繋ぐその手に力を込める。
するとそれに応えるようにサスケも握り返してきた。
その手はとても温かかった。

やがて橙は山の中に吸い込まれ、あたりは再び闇に包まれた。
それでもあの胸のざわめきはおさまらなかった。
「また、来ような。」
「そうだな。」
繋いだ手と手。
それはやっぱり温かくて。

隣にある確かな体温。
大切な存在。

一緒に行こう。
どこか遠くに。
きっとそこには今まで感じたこともないくらい楽しいものがあるはずだから。
一緒に行こう。
手に繋いだその温もりだけを持って、何時までも、何処まででも。





******

ちなみに二人が見たのは夕日です。
樹海って暗闇が支配する〜とか書いてあった気がしたので、太陽とか見たことないのかぁと・・・。
樹海にいたころのサスケにとって、全てのものがマコちゃんと一緒に在ったんだろうな。もちろんマコちゃんにとってもv





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