ぱらぱら

雨が降っている。
彼と初めて会ったのもこんな雨の日だった。
握った手が小さく震えていたのはきっと寒さのせいだけではなかっただろう。
不安に押しつぶされそうになりながら生きていた彼は、それでもあたたかな熱を、自分に与えた。

そんな彼は数日前、自分の前から姿を消した。





消費期限
 



冷たい。
濡れた髪から雫が滴り落ちた。

──あれから何日たっただろう。

真田には戻らずサスケは一人、町を歩いていた。
この雨の中傘もささずに歩くサスケを、擦れ違う人々はじろじろと無遠慮に見ていった。

馬鹿みたいだ。

気付かれないほどの苦笑いを小さくこぼした。
通り過ぎて行く風景もこの雨のせいか以前に見た物とは違って見える。

「何のために・・か。」

ポツリと落とされた声を拾う者は誰もいない。
ただ静かに雨の中へと溶けていくだけだ。

「何のためにオレは・・・」


人を殺すんだろう


この腕に傷を受ける前に、敵が言いはなった台詞。

何のためにお前は人を殺す?

わかりきっている。
幸村を、守るためだ。
幸村を守るために。
人を殺す。
そしてそれが幸村の傍らにいる意味。
そう強く信じた。

ばたばた

雨が激しく体を打ち付けた。

ふと横を向けば、以前幸村と一緒に来たことがある茶屋が見えた。
雨のせいで、店は閉められていて。
ただただ寂しい印象しか今は与えない。
「あいつのことなんて好きじゃねぇし・・」
ただ、自分は真田を守る十勇士だから。
傍にいるんだ。
どうせ他に行くところもない。
ただ。
それだけのことだ。
それだけのために人を自分は殺す。
くだらない。
雨にさらされたままの茶屋の看板に軽くふれてみる。
幸村がこれを指差して楽しげに笑っていたのを思い出した。
浮かんだ幸村の顔を掻き消すように、サスケは乱暴に看板を叩いた。
ガタンという音をたてながら、看板は地に倒れる。
立てられた騒音に、通りを行く人がサスケに不審そうな目を向ける。
そうして慌てて看板を立て直す自分。
ひどく、みじめだ。
痛いくらいに、みじめ。

違う。

わかっている。
わかっている。
わかっている。
幸村のために?
十勇士だから?



違う。

「・・馬鹿だ。」

ただ。

傍にいたかっただけではないか。

どんなに迷惑をかけられても、どれだけ自らを犠牲にしても、アイツの傍に、自分がいたかっただけだ。
そのためには何でもできるし、そのために人も殺した。
浅ましい。
全ては自分のためだ。
幸村のため、では無い。
「うう・・・」
目が熱くなってどうしようもない。
右腕をかきむしると、じわりと血が滲んだ。
人を殺すことでしか、幸村の役にたつことはできないから。
戦えなくなったら、幸村の傍にいる意味なんて、無いだろう。

「幸村・・・」

戦えなくなることが、怖かった。


雨が遠のく音がする。
サスケはずるずると看板によりかかりながらその場に座り込む。
人の目など関係無かった。
ゆっくりと目をつむると、幸村の顔が浮かんだ。


いつまでも傍にいたいと、痛いくらいに、思った。





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***
さ、さらに続きます;ごめんなさい!;
すっごい時間があいたわりにさっぱり進んでないですね!
もし待っていてくださった方がいたらごめんなさい!(いないよ!)
続きはあまり日をあけずにアップしたいです・・(願望/…)






2005.02.20


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