月見花



月を仰ぐ。
それは何者にも捕らわれることなく、ただ一人、輝いていた。

壬生を去った俺は、サスケの主である真田幸村の元で仕えることになった。
今まで手にすることができなかったものが、ここには全てある。
温かいご飯。
温かい布団。
そして何よりも・・・
「小太郎!」
「・・・サスケ・・」
サスケが、いる。
けれど。
その関係は、確実に以前とは違う。
「どうしたんだ?」
「ん、小太郎、これ食えよ。」
「・・・ん?」
そう言って手渡されたのは、お世辞にもきれいとは言えない形のおにぎり。
明らかにサスケが握ったものだろう。
「お前、あんまり食ってないだろ。」
俯きながら、小さな声でサスケは言った。
確かに、九度山に来てから、俺はあまりものを食べていなかった。
皆で食べる飯というものにも慣れていなかったし、それにまだ、どうしても信用しきれていなかった。
頭ではわかっているが、樹海育ちのこの身が、容易く信じることを許してはくれないのだ。
「悪い・・・。」
それだけ言うと、俺はそのおにぎりを一口頬張った。
「サスケ。」
「・・・何だ?」
「お前もこっちに来いよ。月が綺麗だぞ。」
「月・・・?」
この屋敷の縁側からは月が良く見える。
けれど、そこで孤高に輝いている月は、何故か樹海で見たものよりも遠く感じた。
「あ、ホントだ。」
言いながら、サスケは俺の隣に静かに腰を下ろす。
耳にかけられていた銀色に光る髪が一房、ぱらりとおちた。
「あのさ、小太郎。」
「なんだ?」
「あんまり、焦るなよな。」
「何を?」
「ここに馴染もうとするの。」
「サスケ・・・」
「急がなくても大丈夫だからさ・・・。」
「・・・サスケ・・・。」
サスケは照れくさそうに少しだけ笑った。
この存在がいつも、俺にこんなにも温かい気持ちを与えてくれる。
そのことにサスケは気づいてはいないのだろうけれど。
この存在が、きっと、俺にとっての全てだ。
なのに。
どうしてなのだろうか。
こんなにも傍にいるのに、こんなにもサスケとの距離を感じてしまうのは。
離れていた月日のせいなのだろうか。
昔なら躊躇う事無く触れることが出来たその頬も、髪も、手も。
今は、触れることができない。
昔のようには、もうなれないのだろうか。
と、その時。
「・・っくしっっ!!」
サスケが小さくくしゃみをした。
「寒いのか?」
「いや、平気。」
とは言うものの、サスケの頬は寒さから微かに赤くなっている。
「中にもどるか?」
「もうちょっと見てる。」
明らかに寒そうなサスケ。
だけど、自分には肩を抱くこともできない。
「小太郎とこんな風に月を見るのなんて久しぶりだしな!」
「サスケ・・・。」
いたずらに笑うサスケに、小さく胸が鳴る。
そして小さく息をして、そっと、そっとサスケの手を握った。
嫌でも顔が赤くなっていくのがわかる。
「小太郎・・・?」
「・・・少しは・・・あったかいだろ?」
触れたその手は温かくて。
自分の手のほうが冷たかったのだと、余計に恥ずかしくなる。
「あぁ。あったかい!」
それなのに、サスケは本当に嬉しそうに笑うから。
この手を、握りかえしてくれるから。
絶対にサスケを離したくないと思う。
ずっと傍にいて、自分の精一杯で、守りたいと思う。
「綺麗だな。月。」
昔より、遠く感じるのは。
触れられないのは。






ただ。
この存在に、昔以上にやられてしまっているからなのだろう。




















*****
とりあえずマコちゃんが真田の家に来たという設定で。(汗)
深い突っ込みは無しでお願いします。(汗)
マコサスはこんなノリが好きですv
本人達は気づいてないけどナチュラルにイチャイチャしてるという。(笑)
この二人には幸せそうに笑っていてほしいんですよね・・







2004.05.21up


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